フレスコ画は、顔料をバインダー(接着剤)となる物質を一切含ませず水に溶いただけの状態で漆喰の上に描画して行く技法です。
消石灰の成分である水酸化カルシウムが空気中の二酸化炭素と化合して炭酸塩化現象(結晶化現象)と呼ばれる化学変化を起こす事から顔料を定着させます。具体的に説明すると、絵の描かれた漆喰の表面でこの化学変化は起こり、薄い透明な結晶の皮膜(カルサイト)を形成する事から顔料をその中に閉じ込めてしまうのです。この炭酸カルシウムの結晶は成分として石灰岩・大理石と同じもので、非常に優れた耐久性を持っています。
保存環境が良ければ何百年、何千年と作品の美しさを保つ事が出来ます。ヨーロッパの各地で今なお数百年前に描かれた作品を私達が鑑賞できるのは、この素晴らしいメカニズムのおかげだといえるでしょう。