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現在、私はBasilica di S.S Annunziata(サンティッシマ・アンヌンツィアータ教会)の Chiostrino dei Voti(キオストリーノ・デイ・ヴォーティ)内に描かれたPontormo(ポントルモ)作 "Visitazione della Vergine"『聖母の訪問』の壁画修復プロジェクトに参加しています。ポントルモと言えば私も大好きなルネサンス期とバロック期の狭間で活躍したマニエリスムの画家で、この『フレスコ画研究所 "バスティオーニ"』のロゴマークにも彼の作品を使用させていただいています。彼の色使いや構図の美しさには目を見張るものがあり、現在間近で観ていてもやはり大きな感動があります。 この作品は数十年前の修復時、ストラッポ法により一度壁から剥がされ、その後新しい支持体に置き換えられ元の位置に戻されました。今回の修復での大きな問題点は、過去の修復において作品の表裏に使用された樹脂にあったのです。当時、イタリアにはアメリカよりビニール系の樹脂が上陸し、人々は興味本位から様々な分野で使用を試みました。それは修復分野においても例外ではなく、このポントルモの作品もその対象となったのです。現在、壁からストラッポ法によって剥がされたフレスコ画は通常、描画層を補強するという目的から裏面よりオリジナルの漆喰に近い成分を持つカゼインカルシウムを塗布します。しかし、その時はこのカゼインカルシウムに変わってビニール系樹脂が使用され、また、追い打ちをかけるかのように表面にもニスのようにこの樹脂が塗布されたのでした。描画層に表裏から浸透した樹脂は当然しっかり結びつきオリジナルの層はサンドウィッチ状態に。この状況が今回の修復で私達の頭を悩ませる一番の原因となったのでした。何が一番問題かというと、表面から樹脂を除去しようとすると1mmにも満たない描画層にも危険が及び、手がつけられないということ。様々な方法を試みたのですが、結局危険度の高い部分に関しては執拗に介入することを避け、除去可能な部分のみ手を加えるという方法がとられました。また、過去の補色部分(オリジナルではなく、過去の修復によって色が補われた部分)についても同様、状態が良好な部分に関しては除去せずに残すという決断が下されたのでした。 とても使い易く便利な樹脂ですが、ひとつ使用方法を間違えるととんでもない問題が発生してしまいます。避けられない質の劣化もそのひとつだと言えるでしょう。もともとフレスコ画には何の関わりもない樹脂…私も修復では頻繁に使用する技材ですが、今回の経験を経てより今後より慎重に使っていきたいと思いました。過去の過ちから学ぶことも大切ですね。
by affresco-bastioni
| 2008-06-23 20:30
| 修復家の独り言
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