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先週から、ウイア美術修復学校"Universita' Internazionale dell'Arte"壁画修復コース1年目のフレスコ画修復現場実地授業が始まりました。今回修復する対象となったのは、トスカーナ州を中心に活躍した画家ジョバンニ・ドメニコ・フェッレッティ"Giovanni Domenico Ferretti"(1692〜1768)によりビアンコ・ディ・カルチェの技法で描かれた『三位一体と聖人達(聖フランチェスコ、聖アントニオ、聖ペテロ、聖キアラ)』のフレスコ天井画作品です。ロココ時代を駆け抜けた彼は油彩画も手掛けていますが、代表作は何と言ってもフレスコ画。フィレンツェ、ピサ、ピストイアの街々には今でも彼の描いたフレスコ画作品が数多く残っています。フィレンツェではドゥオーモのサン・ジュゼッペ礼拝堂や、サンタ・トリニタ教会のベスプッチ礼拝堂、そしてマサッチョ&マゾリーノ作『楽園追放』のフレスコ画が描かれていることで有名なブランカッチ礼拝堂のあるサンタ・カルミネ教会の天井画デコレーションなどを手掛けています。 今回修復している現場は、フィレンツェのポルタ・ロマーナの近くにあり、現在はイタリアの出版社所有の建物となっています。が、この建物、かつてはサンタ・キアラ"Santa Chiara"と呼ばれたれっきとした教会だったのです。1812年に教会としての機能を失ってからは建物内を壁で2分割に仕切り、彫刻家のアトリエなどとして使われてきました。その時この天井画の一部は側壁同様真っ白に塗りつぶされ、今日まで画面の3分の1は隠され続けてきたのです。今回の修復の第一段階の作業としては、このフレスコ画の一部を覆っている白色顔料の層を除去する事から始めることにしました。学生にとっては初めてのフレスコ画修復現場が天井画とあって少し可愛そうな気もしましたが、ここは200年振りに本来の作品の姿を復活させてあげるためにも頑張ってもらいたいと思います。 当初、このフレスコ画を覆う白色顔料は水溶性のテンペラだと考えていました。なぜなら授業を始めるに当たって事前に行なった試験作業では、比較的簡単に下に隠されているフレスコ画の描画層に辿り着くことができたからです。しかし、いざ授業が始まって作業を進めていくと、画面の大部分がテンペラ層の下にもう一層、消石灰(グラッセッロ)によって塗りつぶされた層があることが発覚したのです。私は試験作業の時、奇しくもこの消石灰の施されていなかった場所を偶然選んでいたのです。これは作業を進めていく上で非常に厄介な問題となります。というのも、消石灰というのは、フレスコ画を描く上で使用する漆喰に含まれているものと同じもの。ですから非常に愛称がよくフレスコ画の画面にぴったりと噛み付いてしまうのです。また、フレスコ画描画行程時に起こる化学変化同様、炭酸塩化現象も起きて全く水に溶けない物質に変化してしまっています。(消石灰は化学組成としては水酸化カルシウムです。これが空気中の二酸化炭素と化学反応を起こし炭酸カルシウムへと変化してしまうのです)こういった場合、それらを除去するためにはメスを使って物理的にフレスコ画の描画層に達するまで少しずつ削っていくのが常です。アルカリ性や酸性の溶剤を使って除去する方法もあることにはあるのですが、時に作品に大きなダメージを引き起こす危険性があるため避けられることが多いのです。 この状況を生徒に説明したときは内心、「え〜っ!最悪!!」というリアクションを恐れ、根気のいる作業を受け入れてくれるか心配していたのですが、意外にも熱心に取り組んでくれて今ではホッとしています。中には「私、この作業が好きみたいです。どんな作品が出てくるのかワクワクします。」と、言ってくれる生徒もいて、授業が始まって2週間…今ではみんなで無理な体勢からくる疲労感と戦いながらも、200年間誰の目にも触れることのなかったフレスコ画との対面を楽しみに作業しています。いったいこの作品の全貌はどのようなものなのでしょうか?ある程度作業が進んだ時点でまたご報告したいと思います。楽しみにしていて下さい!!
by affresco-bastioni
| 2007-11-24 05:10
| 修復家の独り言
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