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7月中旬から始まった、フィレンツェ郊外のフィエーゾレという街にある"ヴィッラ・メディチ"(Villa Medici)敷地内のモニュメント内壁天井壁画修復が終わりました。Villa Mediciはその名の通り、ルネサンス期に繁栄を極めたメディチ家の別荘のひとつです。現在は個人所有となっていますが、その趣きあるたたずまいは、1997年にイタリアで公開された"レオナルド・ピエラッチォーニ"(Leonardo Pieraccioni)主演の花火(Fuochi d'artificio)の撮影場所にも選ばれたほどです。何といってもフィレンツェの街を一望できるところが一番の魅力でしょうか。 さて、今回修復に当たった作品ですが、1900年代前半にオリジナル作品の上を完全に覆うような形で加筆が施された壁画作品で、私が初めて現場に訪れた時は天井のひび割れた部分からの雨漏りの影響で、色層の剥離やひび割れ、漆喰層の欠損など、とても酷い状況でした。(この時点での時代特定は不可能な状態でした)壁画自体に触れることすらままならない状況でしたから、まず最初にこれらのダメージを補強してやる事から修復を始めました。 一通りの補強作業が終わってからは洗浄作業に入ったのですが、ここで1900年代に施された加筆部分を除去すると、ビアンコ・ディ・カルチェの技法で描かれたオリジナルのデコレーションが表面に顔を出しました。テクニックやスタイルから判断して、制作されたのは1700年代後半から1800年代前半頃と思われます。しかし、残念なことに、全ての壁面にこのオリジナルが残っていた訳ではなく、約50%が漆喰層から1900年代前半に置き換えられた状態でした。修復をする上で最も大切な『オリジナルを尊重する』という理論上、私達は全てをオリジナルの形に戻すことを決断。確かに誰が見てもビアンコ・ディ・カルチェの真っ白な漆喰層に描かれた色彩の方が明度・彩度ともに優れていました。ここでの大きな問題となったのは、加筆時に使用された樹脂ベースの顔料を壁面からいかに完全に近い状態で除去するかでした。様々なテスト洗浄をした繰り返し、一番効果的な方法を選択。そして、一番厄介な壁内に残った樹脂及び不純物を取り除くために吸収性のあるパック法を採用したのでした。 その後、欠落していた部分に化粧漆喰を施す作業などを経てから、いよいよ補色作業にはいりました。完全にオリジナルが失われた部分に関しては、写真による記録をとってから再現修復することにしました。こうして、約100年振りに描かれた当時の色彩が蘇ったのでした。仕事としては規模の小さなものでしたが、夏の暑い気候や天井壁画という修復困難な姿勢での仕事、おまけに山に囲まれた環境から蚊に悩まされたりもして終わった時には「やれやれ…」と、本音が出てしまいました。(笑) このフィエーゾレのVilla Mediciは個人所有地ではありますが、不定期に一般公開されることもあります。訪れた人にとっては庭園の一角にあるモニュメントに過ぎないでしょうが、休憩がてら足を止めて、ちょっと見上げてこの可愛らしいデコレーションを観て楽しんでもらえればと思います。 簡単ではありますが、"ヴィッラ・メディチ" モニュメント内壁天井壁画の修復過程をお伝えしました。
by affresco-bastioni
| 2007-09-06 03:36
| 修復家の独り言
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