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サン・マルコ美術館。もともと修道院であったこの場所にはサンタントニオ、サン・ドメニコと呼ばれる2つの回廊があります。そのサンタントニオの回廊北側に位置する聖堂参事会員室には、フラ・アンジェリコによって描かれた『キリストの磔刑図と聖人達』と呼ばれるフレスコ画があります。この作品は、保存管理・修復に向けた調査が開始されてから4年目を迎える今年、無事に全行程を終え、再び訪れる人々に感動を与えています。 少し作品にまつわる保存修復の歴史をお話しましょう。この壁画は1967年の時点で多大なるダメージを受けていました。背景は後世の修復によって度重なる加筆が施され、表面には塩やカビが大量発生していたのです。こうした症状を改善させようと1967年から1974年にかけ、壁画保存修復士ディーノ・ディーニ氏とフィレンツェ大学のエンツォ・フェッローニ氏が協力し、新たな保存修復技術の開発が始まります。そして、数々の実験研究を繰り返し完成されたのが『アンモニウム&バリウム法』でした。この技法は、それまでの壁画保存修復技術とは一線を画した画期的なものでした。 それは、可溶性塩を不溶性塩に変え、かつ彩色層の凝集力を復活させるものでした。この方法が開発されると、それまで塩の発生により彩色層に傷みを抱えるフレスコ画の多くはストラッポ法によって壁から剥がされることが常であった状況から脱し、制作されたオリジナルの壁面に留める形での修復が可能となったのでした。 2011年にこの磔刑図の保存管理プロジェクトが始まると、非破壊での分析調査も並行して実施され、壁画制作時における技法や保存状態のチェック、また進行中と判断できる傷みの確認が行われました。その結果、1970年代に行われた修復は全体的な保存という面において、非常に良い状態が保たれている事が分かったのでした。これは、前述した革新的な修復方法が着実に効果を発揮していることを裏付けるものでした。 それでも、予防策に乏しい金箔使用箇所や修復による加筆箇所の老朽化、および塩の発生に伴う微細な彩色層の剥離が発生していることが分かりました。これ等の症状は、通常保存管理で行われる軽いクリーニングや補強作業では対処できるものではなく、各症状の改善に向けた対処法を導き出すべく数々のテストが繰り返されました。そして、2013年よりそれまでの保存管理に引き続き、本格的な保存修復が開始されたのでした。作業行程の中では、40年前に行われたあの『アンモニウム&バリウム法』も再び採用され可溶性塩や彩色層の剥離といった問題点も解消されました。その結果、現在はフラ・アンジェリコが描いた当初の神聖な輝きを取り戻しています。 今年も壁画保存修復の世界を通じて、多くの人々や作品との出会いがありました。また、このブログにも沢山の方々に訪れいただき、心より嬉しく思っております。2015年も引き続き壁画の研究を続ける傍ら、少しでも多くの作品を救うべく活動を展開して行きたいと思います。そして、壁画の世界や保存修復の世界を皆さんにお伝えして行けるよう発信して参りますので、どうぞよろしくお願い致します。 皆様にとって2015年が素晴らしい一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。
by affresco-bastioni
| 2014-12-12 21:00
| 修復家の独り言
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