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壁画修復を行うにあたり、実際に壁に触れて作業を行うまでには、様々な調査・研究を行う必要があります。主な目的としましては、作品に優しく、より安全なミスのない修復を行う、後の修復家に現時点での修復過程を的確な形で伝達する、修復家として己の知識・技術向上させるなどが挙げられます。ここで、通常とられる大まかな調査研究段階を説明したいと思います。 第1段階 作品が保存されている場所の歴史、作品自体の歴史に関する美術的情報調査を行います。イタリアの壁画作品においては、高い確率で参考文献や記録などが保存されているケースが多いです。また、過去における修復の介入があれば、その時の資料も得ることが可能です。そして、それらをもとに、作品の保存場所の構造と保存状況、保存環境の分析から作品の作家、制作時期、作品寸法、図像学的解釈を行います。実際に修復作業を始める前に、その場の環境を出来る限り把握しておくことはとても大切なことで、後々の介入方法、使用する薬品の選択にも大きな役割を果たします。作品の生命を救うためにも失敗の許されない修復作業において、非常に大切な作業といえます。 第2段階 壁画描画に使われたテクニックの特定を行います。作品がブオン・フレスコ法で描かれているのか、メッツォ・フレスコ法で描かれているのか。また、セッコ法で描かれているのか、混合技法で描かれているのか。描画にあたって使用されたデッサンの転写方法、ジョルナータの確認、金箔の有無、イントナコ層の厚みなど、それらを出来る限りの範囲で判別していきます。作品の痛み・汚れが比較的軽く、読み取り可能な場合はグラフィックを作成し、収集した情報を記入していきます。 第3段階 肉眼で判断できる範囲内での保存状況を分析していきます。剥離・色層の剥離、イントナコとアリッチョ、アリッチョと支持体間での分離の有無、ひび割れ、塩素の有無など…。前段階でグラフィックを作成していれば、これらの情報も記入しておきます。 第4段階 紫外線、赤外線など、以前紹介しましたが、作品にダメージを与えない方法で作品を診断していきます。また、こちらは作品にダメージを与えてしまうのですが、必要でればサンプルを採取しての化学分析などを行います。判断の難しい青い顔料などは、その種類によって修復で使用する薬品にも使用可能・不可能なものがでてきますので(変色、劣化の恐れがあります)、正確に判断することは非常に大切なことです。それから、一見同じように見えてしまう塩素においても、いかなる種類の塩素であるかを判断するためにサンプルを採取して、化学分析を行うことは非常に有効です。また、カビなどが確認される場合においても、種類を判別するために行われます。これらの作業で得た情報も全てグラフィックに書き込み、記録していきます。 第5段階 修復作業前の写真による記録を行います。通常光、斜光を使ってのモノクロ及びカラーでの写真撮影を行います。また、サンプル採取を行った場合などは、採取場所にシールなどで目印を施し、写真で記録しておくことも大切です。 これらが、修復介入前のおおまかな作業の段階です。これらの調査・記録作業はとても重要で、どんなに小さな壁画作品でも時間を割いて行います。修復というものは、ただ単に作業を終えればいいというものではありません。これから数十年、数百年の後、再び作品が痛み修復が必要となった時、未来の修復家に今日の情報を的確に伝えることも重要な役割なのです。
by affresco-bastioni
| 2006-05-17 17:01
| 修復家の独り言
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