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今月の8日より、『実現なるか?!大規模な壁画保存修復!』の中でも触れていたポントルモとロッソ・フィオレンティーノに焦点を当てた展覧会が、フィレンツェにあるストロッツィ宮殿“Palazzo Strozzi”にて開催されました。この展覧会には、世界中に現存する両作家の作品の約70%が集められており、イタリアのみならず世界中から注目を集めています。 ポントルモは個人的にも思い入れの強い、イタリア・ルネサンスが終焉を迎えた直後の時期を代表する作家のひとりで、フレスコ画研究所バスティオーニのロゴにも彼の描いたフレスコ画作品の一部(サンタ・フェリチタ教会所蔵『受胎告知』)を使わせていただいています。マニエリスムと呼ばれる表現方法を取り入れた巧みな作品構成は、後に続く多くの芸術家に多大なる影響を与えました。 ここで、マニエリスムとはどういったものなのかを簡単に説明したいと思います。イタリア語では“Manierismo”(マニエリズモ)と呼ばれるこの言葉は、ひとつの美術様式を指します。盛期ルネサンスとバロックの狭間に当たる16世紀の中頃から終盤にかけ、イタリアを中心に発展を遂げました。 レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロ、ラファエロといったイタリア・ルネサンスを代表する巨匠達の手によってある意味完成された芸術表現。それを凌駕するような作品を生み出すことは、後に続く芸術家達にとっては容易なことではありませんでした。ミケランジェロがシスティーナ礼拝堂に描いた『最後の審判』にみられる人物群は、解剖学的にみればつじつまが合わない点が多いにも関わらず、芸術作品として全体を見た場合、大きな違和感なく私達の目に飛び込んできます。人間の目を介した上で、作品に強いメッセージ性を持たせるにはどのようにすればいいのか。その点を追求した結果、不自然ともいえる誇張された表現を随所に取り入れることによって、見たままを写し取っただけでは決して造りあげることのできない世界観を生み出すことに成功したのです。 後にヴァザーリは、ルネサンスの先駆者と呼ばれるジョット達が築き上げた芸術に対して、それから百数十年後に誕生したこれ等の様式を「bella maniera」(美しい様式)と定義付け、後にManierismoと呼ばれるきっかけとなりました。 ミケランジェロ達の様な巨匠に続けと、その様式を積極的に取り入れ制作に励んだ画家達はマニエリスタと呼ばれるようになります。ポントルモやロッソ・フィオレンティーノも盛期ルネサンスにフィレンツェで活躍していたアンドレア・デル・サルトに弟子入りすると、この古典的様式の完成形を身に付けようと試行錯誤を繰り返すとともに、更なる高みを目指して躍動しました。しかし、先にも書いた様に、先人達によって築き上げられた完成度の高い芸術性を凌駕する作品を生み出すことは簡単ではありませんでした。努力も空しく、彼らの生み出す作品は、「ミケランジェロを模しただけの創造性を欠いた単なるまねごと」と切り捨てられ、なんと20世紀に至るまで大きな評価を受けることはありませんでした。 一時は「まねごと」と切り捨てられていたマニエリスタが芸術活動の中で意図していたものとは一体何だったのでしょうか?技術的な部分をみてゆけば、それは誇張された遠近法や短縮法。明暗法の導入や解剖学的に無理のある人体表現。不自然な空間表現や補色を大胆に用いた色遣いなどが挙げられます。しかし、根底にあるものは、キリスト教世界に起こった「宗教改革」や教皇領であるローマで起こった「ローマ略奪」に裏付けられる様、混乱に満ちた16世紀であるが故の、社会的混乱と危機感を募らせた人々の心を反映させる表現手段であり、新たな時代の訪れに伴う過去との決別。すなわち、盛期ルネサンスが紡ぎだす調和性の破壊にあったと指摘できるのです。 こうした点が後世になり、「マニエリスムは一つの表現方法である」との評価を受けるきっかけとなりました。単なるまねごとではなくなったのです。この再評価がなされていなければ…今回の展覧会も企画されていなかったのかもしれません。 今回の展覧会の副題には-Divergenti vie della maniera-と付けられています。日本語に訳すと「マニエラ【様式】の分岐路」とでもいいましょうか。ミケランジェロがルーツと考えた場合の“Bella maniera”が、ポントルモやロッソ・フィオレンティーノ等によってどの様な方向へと進んでいったのか...?展覧会は7月20日までを予定されています。この期間にフィレンツェを訪れられる方は是非、ストロッツィ宮殿に足を運んでみて下さい。また、サンティッシマ・アンヌンツィアータ教会ヴォーティの回廊より運ばれたパネル保存型フレスコ画3点にも是非ご注目下さい。照明により美しく照らし出された作品は、回廊内とはまた違った表情を私達に見せてくれる事でしょう。 最後に、本日2014年3月11日を迎え、東日本大震災が発生してから3年の月日が経ちました。この場をお借りし、震災の犠牲によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りいたします。
by affresco-bastioni
| 2014-03-11 08:00
| 修復家の独り言
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