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はじめに。 色々な方々からご連絡をいただいておりましたが、しばらくの間更新できずにおりました。というのも今年の春より活動の場を日本へ移すこととなり、その影響でブログの更新もできておりませんでした。大変申し訳ございません。今後はアジアの壁画保存修復の研究活動を行う予定ですが、引き続きフレスコ画及びフレスコ画保存修復に関する情報も発信して行きたいと思います。みなさま、どうぞよろしくお願いいたします。 さて、今年の3月のブログ記事にも書かせていただいた世界中が注目するレオナルド・ダ・ヴィンチ作壁画『アンギアーリの戦い』 "Battaglia di Anghiari"。前回は、レオナルドの作品があるであろうと推測される場所の壁中より顔料が採取されたことについてお話しました。 現在はジョルジョ・ヴァザーリの巨大なフレスコ画作品で覆われていますが、長年に渡り研究を続けておられるマウリッツィオ・サラチーニ氏と彼の率いるチームが過去の文献資料などを参考に場所を特定。そして、フィレンツェ国立修復研究所の保存修復士と共に、ヴァザーリのフレスコ画作品に見られる亀裂部分や、過去の修復で施された化粧漆喰(補填漆喰)を除去した部分より機材を挿入させ、顔料のサンプルを採取しました。レオナルドは何事にも研究熱心な人でしたから、使用する顔料も彼独自の調合を行っていたのですが、今回の調査で採取された顔料を分析したところ、なんとその特殊に調合されたレオナルドの顔料と酷似している結果が得られたのです。これで研究者たちの気持ちは一気に高ぶり、幻と言われ続けてきたレオナルドの壁画の存在が「実在する!」という確信へと変わってゆきました。 サラチーニ氏とフィレンツェ市長レンツィ氏 (New Press Photo) 昨年の11~12月にかけて行われたこの調査。その後どうなっているかというと・・・非常に難航しています。一度は文化庁から調査の継続を承認されたものの、マウリッツィオ・サラチーニ氏が掲げた今後の調査プランが決断を鈍らせているようです。その内容とは、「ヴァザーリのフレスコ画において1800年代に行われた修復箇所に限定した数センチという僅かな面積での*スタッコを行い、壁から剥がしたうえでその裏側を調査し、レオナルドの壁画がどのような状態にあるかを見極めたい」というものでした。ヴァザーリ(正確にはヴァザーリの工房)によって制作されたフレスコ画ですが、現在のコンディションはまさに完璧と呼ぶにふさわしい状況です。近年の壁画保存修復では、『可能な限り作品を壁から剥がすことは避けなければならない』と言われているだけあって、この要求に対して文化庁がなかなか「イエス」と言えないのも納得できます。それが例え過去の修復において手を加えられた部分であってもです。それでなくても、前回の調査が行われた際には、サンプルを採取されたときに開けられた穴が「作品を傷つけた」と大きな問題になりました。結局、「亀裂や過去の化粧漆喰を除去した部分を利用しただけで、作品は傷つけていない」との説明で騒ぎは一応収まったのですが、今回のスタッコについてはそう簡単に行きそうもありません。 フィレンツェの市長はこの調査に対し高い関心や理解を示し非常に協力的です。最近では文化庁に対し自らこのプロジェクトの継続を求める手紙も書いています。そこには、「約30年前に行われた同内容の調査では、ヴァザーリのフレスコ画において全く間違った場所を*ストラッポ法により剥がし、何の結果も得られなかった。しかし今回は綿密な調査のもとレオナルドの壁画が実在すると断定できるに相応しい結果も得られている。」と書かれています。さて、世界中が見守るこの調査研究。何か問題が起これば想像を絶するバッシングが浴びせられることは必至です。トラブルが起きれば誰も責任を負いたくはないもの。果たして、どのような決断が下されるでしょう?今の内閣が変わらない限り前には進まないのか・・・今後も見守りたいと思います。 *スタッコ法とストラッポ法 「スタッコ」とは「分離」を意味し、「ストラッポ」とは「剥がす」を意味するイタリア語です。「スタッコ法」とは、イントナコ層をアリッチョ層と接する境から分離する方法を言い、「ストラッポ法」とは、イントナコの表面にある描画層数ミリを剥がす方法を言います。どちらもフレスコ画の特徴のひとつである高い耐久性を低下させる原因に繋がることから、壁画保存修復において現在は急を要さない限り使用は制限されています。
by affresco-bastioni
| 2012-08-14 11:00
| 修復家の独り言
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