カテゴリ
以前の記事
2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 10月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 08月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 リンク
ライフログ
最新のトラックバック
検索
ブログパーツ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
以前、「調査研究の重要性」2006-3-19で少しお話した、フレスコ画の調査研究方法について触れたいと思います。今回挙げた調査方法は、サンプルを採取しての分析などとは対照的に、"ノー・ダメージ検査法"と呼ばれる作品に負担をかけないものばかりです。 紫外線による診断 紫外線は作品表面に使用されている物質を判断するために使用します。非常に弱い放射線で、通常診断を行うためには環境を暗くしてあげる必要があります。また光を直視しないように気をつけなくてはなりません。 紫外線を照射することにより、有機物質や合成物質の存在が認められると、その部分は蛍光性を示し光を放ちます。この蛍光性の強さは、作品に使用されている物質にもよりますが、古ければ古いほど、その効果を増すという性質があります。診断では、蛍光性を持つのか紫外線を吸収するのか、またどのようなタイプの光を放つのかである程度使用されている物質が何なのかを判断することができます。 壁画では、セッコ法で描かれている作品であれば、リンシードオイルを使って描かれていれば黄色く発光し、卵テンペラで描かれていれば薄い水色に発光、アラビアゴムが使われていれば発光しません。また、白い顔料の診断も可能で、ジンコホワイトが使用されていればピンク色に発光し、鉛白が使用されていれば水色に発光、チタニウムホワイトが使われていれば発光しません。比較的安価で、取り扱いしやすいことから、フレスコ画修復現場では頻繁に使用されます。 赤外線による診断 赤外線は作品表面下10~100μにまで達することから、壁画制作途中での作家の修正箇所や加筆部分、まれにみられるイントナコに描かれたシノピアなどを確認することができます。また、壁画修復では特に注意を払わなければならない青色顔料の判別にも効果を発揮します。アズライトやプルシアンブルーが使用されていれば黒く写り(アズライトが変色したマラカイトも同様)、ラピスラズリが使用されていれば赤く写ります。 通常、波長帯が広範囲にまで及ぶ赤外線TVが用いられ、モニターを通して確認・記録作業を行います。大掛かりな準備工程を必要とすることから紫外線診断に比べるとその使用頻度は少ないですが、意外な発見があり効果的な診断法といえます。 サーマルビジョンによる診断 紫外線診断、赤外線診断は作品の表面部分を分析する調査法でしたが、サーマルビジョンでは壁画の内部構造を調査することができます。壁画にファンヒーターを使って温風をあて、温度を上昇させます。その後、冷めていく過程での温度差を赤外線カメラで感知させ記録していくことで内部構造を正確に捉えることができます。 この診断により、イントナコとアリッチョ間、またはアリッチョと支持体間での剥離・亀裂状況はもちろんのこと、支持体が組まれている細かい構造まで知ることができます。また、単に壁画の構造上のコンディションを記録するだけではありません。壁中に空洞などがあれば、その部分にあたるフレスコ画の表面では他の部分とは異なる炭酸塩化現象が起きた可能性がでてきます。事前にその情報を得ることによって修復の介入方法も事前に検討することができるのです。 フォトメトリーによる計測(光学測定法) この技術は、大面積に描かれていることの多い壁画の寸法をきっちりと測るためのものです。メジャーを使って端から端まで測るのは確かにかなり大変な作業です。しかしこの技術を使うことによって正確な寸法をきっちりと読み取ることができます。もともとは地図の作成や建築分野で使われていましたが、最近ではフレスコ画修復などにも用いられるようになりました。ベッキオ宮殿の500人広場でのレオナルド・ダ・ヴィンチ作『アンギアーリの戦い』探索調査のときにもこの技術が活用されていました。 今回は代表的な診断方法を紹介しましたが、この他にもまだまだ沢山の診断・調査方法があります。テクノロジーの発達により毎年様々な技術が修復現場にも取り入れられています。その多くは専門の技術者がおり、必要な際には現場に彼らを招いて作業を依頼します。が、それぞれの技術に対する最低限の知識は修復家にとっても大切です。伝統修復技法と並び、時代の流れに対応していくことも大切だといえるでしょう。
by affresco-bastioni
| 2006-04-04 04:58
| 修復家の独り言
|
ファン申請 |
||