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日本の新聞でも取り上げられていたと思いますが、以前から行われているレオナルド・ダ・ヴィンチ作『アンギアーリの戦い』 "Battaglia di Anghiari" をテーマとする幻の壁画。昨年末から今年にかけマウリッツィオ・サラチーニ氏を中心とするカリフォルニア大学の調査チームが行った調査で、その壁画の存在を裏付ける貴重な調査結果が得られました。 フィレンツェのヴェッキオ宮殿にある500人広間に描かれたとされるこの作品があった場所には現在、1567年にジョルジョ・ヴァザーリの工房により『シエナの攻防戦』などをテーマに描かれた巨大なフレスコ画群で覆われています。調査はそのバザーリの壁画の裏にレオナルドが描いたフレスコ画が残っているのではないかというもので、マウリッツィオ・サラチーニ氏は30年前から研究を行ってきました。今回の調査では、ヴァザーリの壁画の亀裂部分や、過去の修復で施された化粧漆喰部分に穴を開け、ファイバースコープなどを用いて壁画の裏側を調べたのですが、赤や黒の顔料と思われるものの存在が認められました。そして、それらをサンプル採取し化学的に分析したところ、レオナルドが当時使用していたと思われる顔料の成分と酷似していることが分かったのです。 イタリアでは国営放送にて、この興味深い発見に関する特集番組が作られました。その中ではヴァザーリの壁画の前で行われた調査の模様なども紹介されており、中には、アンギアーリの戦いが描かれていた場所を特定するため、現存するピーテル・パウル・ルーベンスのデッサン画を原寸大に拡大し壁に投影される様子も含まれていますが、「描かれた当時はこんな感じだったのか〜」と、大変興味深いです。この映像が動画サイトにてアップされていましたのでここでご紹介しておきます。イタリア語が分からない方でも見ているだけで十分に楽しめるの番組ではないかと思います。 一連の調査は終わった訳ですが、今回の調査結果を受けフィレンツェ市長がイタリア文化庁に調査の継続を打診。現存するヴァザーリの壁画を傷つけないことを条件に許可が下ろされたのでした。
最近多くのフレスコ画講習に関するお問い合わせをいただいておりますが、こちらの都合で開講することができておりません。大変申し訳無く思っております。 そこで、そんなフレスコ画技法にご興味をお持ちの方々に少しでも役立てばと、新たにフレスコ画描画行程をご紹介したいと思います。前回に引き続き、ポントルモのフレスコ画作品『受胎告知』の一部をフレスコ画で描いてみましょう。ちなみにこの作品は『フレスコ画研究所 "バスティオーニ"』のロゴにもなっております。 ①イントナコを塗る 日本ではなかなか壁に直接フレスコ画を描く環境が無く、パネルなどの上に制作される方も多いかと思います。描画層となるイントナコを塗る際には、出来るだけ綺麗な表面を作りましょう。この時、鏝の上からしっかりと圧力をかけ塗ることを心掛けて下さい。剥離やひび割れの防止に繋がります。下地となる層アリッチョがある場合には、霧吹きなどでよく湿らせてから塗るようにして下さい。そうする事によりイントナコの乾燥を遅らせ、より長い制作時間を確保することができます。 ![]() ②デッサンを転写する イントナコ表面を指先で触れ、何も消石灰の白色が手に付かなければOK。スポルベロ法を使ってデッサンを転写します。あらかじめラインに沿って穴を開けておいたデッサンをイントナコの上に充てがい、その上を顔料の粉を木目の細かいガーゼなどで包んで作った「タンポ」で軽く叩いて行きます。(綿花に顔料を付けて叩いても同じ効果が得られます)穴から落ちた顔料の粉が画面に付着して行きます。 ![]() ③ラインを起こす スポルベルにより点状に画面に付着した顔料をラインで繋いで行きます。このラインが描画する際のガイドラインとなりますので、慎重に綺麗なラインを引くことを心掛けてください。 ![]() ④人肌の表現のためヴェルダッチョを施す 人物の肌に当たる部分にヴェルダッチョを施します。フレスコ画は乾くと筆のラインが浮き上がり易いので、走らせる筆の方向にも注意が必要です。 ![]() ⑤Momento d'oroに向かって イントナコ自体は乾燥すると白くなります。そのことを意識しながら色を重ねて行くことで下地を生かした透明感のある仕上がりとなります。大胆かつ丁寧に筆を走らせましょう。最初はイントナコに多くの水分が含まれていますから、画面はなかなか顔料を受け入れてくれません。一カ所にとどまらず、作品全体を平行して進めて行きましょう。数時間が経過すると『黄金の時間』と呼ばれる『モメント・ドーロ』 "Momento d'oro" が訪れます。その瞬間からイントナコの吸水性が向上し、一気に描き易くなります。それまでは思うように色が画面に乗らず不安になるかもしれませんが、『モメント・ドーロ』到来を信じて制作してください。また、フレスコ画はイントナコが乾燥するにつれ発色が変化します。簡単に言うと描いた直後に比べ色が薄くなって行きます。ある程度の経験が必要ですが、自分が思うよりも「少し濃い目かな?」というレベルに顔料を調合して描画してみてください。(制作する前に別の場所で色の変色具合をチェックしてみることをお勧めします) ![]() ⑧完成 細部などの描き込みも終え完成しました。フレスコ画は描き終えてからも1年以上の時間をかけゆっくりと炭酸塩化現象(結晶化現象)が進みます。ですから1年後には更に美しい発色となるでしょう。そしてその美しい発色は、数百年が経過しても失われることはないでしょう・・・ ![]() 何か分からない点があればフレスコ画研究所 "バスティオーニ" ホームページを通じてお気軽にご連絡ください。今年(もしくは来年)は日本でもフレスコ画講習会を企画することができればと考えております。フレスコ画にご興味をお持ちの方は是非ご参加下さい!
皆様、新年明けましておめでとうございます。 昨年も壁画保存修復活動を通じて、様々な出会いがありました。また、多くの方から「フレスコ画・壁画が好きになりました」といった声を寄せていただき大変嬉しく思っております。今年も様々な形で情報を発信して行きたいと思っております。 本年もどうぞよろしくお願いいたします! ![]()
このブログでもご紹介させていただいているフレスコ画描画技法のひとつヴェルダッチョ。(*参照"フレスコ画でよく聞く用語について")現在、保存修復を行っているフレスコ画にもこの技法が用いられており、非常に理想的な効果が得られているのでご紹介したいと思います。 フレスコ画は、フィレンツェからシエナに向かう途中にある小さな街「コッレ・ディ・ヴァル・デルサ」 "Colle di Val d'Elsa" という街の郊外の古い教会の中に描かれています。『聖母子と聖ロレンツオと聖セバスティアーノ』をテーマに1400年代後半、ピエル・フランチェスコ・フィオレンティーノ "Pier Francesco Fiorentino" という作家によって描かれたものです。ピエル・フランチェスコ・フィオレンティーノは画家としてそれほど名前は知られていませんが、サン・ジミニャーノやチェルタルドなど、フィレンツェ南部にある小さな街に作品を残しています。時にはあのドメニコ・ギルランダイオやベノッツォ・ゴッツォリと一緒にフレスコ画制作をした記録も残っていますから、一流の画家ではなかったにせよそれなりに認められた画家のひとりだったのかもしれません。 ![]() さて、ここに描かれている聖ロレンツォの顔をみてみると、ヴェルダッチョの下塗りが、丁寧に塗り重ねられた肌の色とうまく溶け合っていることが分かります。チェンニーノ・チェンニーニ "Cennino Cennini" が書いた技法書『藝術の書』"Libro dell'Arte" の中で説明されている手順とほぼ一致する描き方は、若き青年の肌の質感を見事に表現していると言えるでしょう。ブオン・フレスコ画法の特徴ともいえる色彩の透明感。これこそこの技法ならではの美しさだと私は思います。 ![]() ![]() ちなみに、背景に塗られている赤い色は、青色顔料の発色を良くするために塗られたプレパレーション用(下地塗り)のものです。青色顔料として使用されたアズライトは、強いアルカリ性を示す湿った漆喰の上では変色を起こすため使用することができません。ですからセッコ画法を用いて漆喰が完全に乾いた状態で塗られたのですが、使用されたバインダー(接着剤)の老朽化からか全て剥離して現在はほとんど残っていません。壁画の上でもっとも美しく発色する青色顔料ラピスラズリが高価だっため、それに近い発色を安価で表現するために考えられたこの赤・青2層塗り分け技法。現在も青色顔料が剥離しプレパレーションの赤色顔料がむき出しとなっているフレスコ画作品が数多く存在します。
このブログでも何度かご紹介させていただいた、"Casa Vasari a Firenze"『バザーリの家 フィレンツェ』大広間に描かれたジョルジョ・バザーリ作フレスコ画。壁画保存修復が終った後、新たな照明の設置や周辺環境の整備も整い、9月23日に記念式典が開かれました。私は私用で日本に帰国していた為残念ながら参加する事は出来ませんでしたが、同僚曰く、美術評論家やマスコミ関係者の方々など沢山の人が集って下さり、とても良い雰囲気の式典となったようです。 ![]() これを機に、『バザーリの家 フィレンツェ』も遂に一般公開の時を迎えました。フレスコ画の保存修復が終わったのが2009年12月でしたから、実に1年と9ヶ月・・・長かったような短かったような・・・個人的には本当に見応えのある作品だと思います。ジョルジョ・バザーリ(1511-1574)が生誕してから今年でちょうど500周年…是非みなさんにも間近でこの作品をご覧いただき、500年の時の流れを体感していただければ嬉しく思います。見学に関しましては、現在のところ完全予約制となっております。受付は施設管理を行っている "MUSEO HORNE"(ホーン美術館)で行っており、毎週金曜日、土曜日、日曜日の3日間、午前10時、11時、12時の3回、ガイドさん引率の元見学していただけます。下記に情報をまとめましたのでご覧下さい。 "Casa Vasari a Firenze"『バザーリの家 フィレンツェ』 公開日時:毎週 金曜日・土曜日・日曜日(10時・11時・12時) チケット:6ユーロ 受付・集合場所: "MUSEO HORNE"(ホーン美術館) Via del Benci 6 - Firenze お問い合わせ: E-mail info@museohorne.it Tel 055-244661 Fax 055-2009252 ご覧になられた方は是非、感想などお聞かせいただけると嬉しく思います。500年の間人目に触れる事のなかったこの作品が、今後世界中の人々に愛される作品となりますように。。。
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